休職期間満了後は解雇?退職扱い?トラブルを防ぐための対策も解説


休職期間満了後は解雇?退職扱い?トラブルを防ぐための対策も解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

休職期間中に従業員の傷病が回復せず、職務に復帰できないことがあります。その場合、休職期間が終了したら解雇とするか、あるいは退職扱いとするか、迷う方も多いのではないでしょうか。

従業員を安易に解雇することはできず、誤った対応を取れば不当解雇とみなされる恐れがあります。この記事では、休職期間満了後の対応や、休職トラブルを防ぐための対策について解説するので、参考にしてください。

休職期間満了とは

労働者が業務外の傷病により働けなくなった場合は、普通解雇の理由になります。しかし、多くの会社では休職制度を設けることで、解雇を一定期間猶予する措置を取ります。

休職期間満了後は復職することが前提であり、休職の原因となった傷病の治癒が認められなければ離職となります。

取得できる休職期間は勤続年数などによって異なりますが、期間が満了したら原則として復職または離職のいずれかを選ばなくてはなりません。

休職期間満了後の対応方法

休職期間満了後の離職方法は、「解雇」「退職扱い」の2つです。

労働基準法に休職制度に関する定めはないため、対応は会社の就業規則に準じます。それぞれの違いを理解した上で、どちらの対応とするか就業規則に定めておきましょう。

従業員を解雇する

従業員を解雇すると定めた場合、労働基準法により従業員に解雇予告を通知することが義務付けられています。休職期間満了の30日前までに「復職できなければ解雇する」旨を記載した通知書を送付しなければなりません。

通知を行わずに解雇する場合は、解雇までの残日数に応じた「解雇予告手当」を支払う必要があります。

「解雇」については、こちらの記事をご確認ください。

従業員を退職扱いとする

従業員を退職扱いとする場合、解雇予告の通知は不要です。そのため、多くの企業が「休職期間満了後は自然退職とする」と定めています。

通知義務はありせんが、トラブルを避けるためには予告したほうがよいでしょう。解雇するときと同様に、休職期間満了前に「復職できなければ退職扱いになる」旨を通知してください。

休職期間を延長する

会社の取り決め次第では、休職期間を延長できます。休職期間の延長を認める場合は、就業規則に申請方法や期間の上限を定めておきましょう。

特定の従業員にのみ延長を認めてしまうと、不公平感が生じてトラブルにつながる恐れがあります。認める基準を明らかにして、医師が療養に必要と判断した期間だけ延長を認めるようにしましょう。

「休職延長」については、こちらの記事をご確認ください。

不当解雇と判断されるケース

休職期間が満了した従業員を解雇する場合、対応を誤ると不当解雇とみなされる恐れがあります。具体的なケースを紹介するので、参考にしてください。

会社に原因がある

業務上の傷病が原因で休職する場合、労働基準法により「療養するために休業する期間、およびその後30日間」は解雇が禁止されています。つまり、会社に原因がある場合は原則として解雇できず、復職できる状態になるまで待たなくてはならないのです。

例えば業務中のけがや、ハラスメントや長時間労働によるうつ病などが挙げられます。判断が難しいケースもありますが、業務と傷病との間に一定の因果関係があれば不当解雇とみなされる恐れがあるので、注意しましょう。

医師が復職可能と判断している

復職の判断は最終的に会社が行いますが、医師の診断を尊重しなければなりません。医師が復職可能と判断しているにもかかわらず解雇した場合は、不当解雇と見なされる恐れがあります。

主治医の診断書に疑問を感じたら、会社指定の医療機関を受診させるか、産業医に判断を仰ぐとよいでしょう。

従業員を解雇する前に会社が検討すべきこと



従業員を解雇する前に、本当に復職が難しいのか慎重に検討してください。本人の意思を尊重することが大切です。

リハビリ出勤制度を活用させる

復職に不安を覚えている従業員には、リハビリ出勤制度を利用させるとよいでしょう。いきなりフルタイムで働くのではなく、少しずつ勤務に慣れてもらう制度です。

リハビリ出勤には、以下のようにさまざまな方法があります。

  • 復職支援プログラムに取り組む
  • 通勤訓練として、会社と家を往復する
  • 本来の職場で午前中だけ勤務する


対象者の状態に合わせて、柔軟な対応を心がけてください。また、リハビリ出勤制度について他の従業員にも周知しておくことで、復職しやすい環境を整えておきましょう。

配置転換などの配慮を行う

従業員が希望する場合は、復職後に以下のような配慮を行いましょう。

  • 配置転換
  • 労働時間の短縮
  • 責任の軽減


休職期間満了後は、休職前と同じ職務に復帰させるのが原則です。しかし、従業員が他の職務を希望する可能性があります。

現実的に配置可能な部署、あるいは担当できる業務があれば、できる限り配慮したほうがよいでしょう。従業員の希望を考慮せず無理に復職させると、傷病が再発して休職を繰り返す恐れがあります。

職務内容や役職の変更に伴って賃金を減額する場合は、就業規則にその旨を定めておきましょう。

産業医に面談を依頼する

従業員が復職可能か判断する際には、産業医の意見を取り入れることが重要です。

主治医は、休職者の業務内容を正確に把握しているわけではありません。そのため、主治医の診断書だけで判断すると、診断と実態に乖離が生じる恐れがあります。

産業医は、会社の業務内容や労働者の働き方を把握しています。復職前に産業医と面談を行うことで、実態に即した判断ができるでしょう。

タレントパレットなら産業医面談の実施や面談記録の管理を簡単に行えるので、ぜひ活用してください。

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休職期間が満了した従業員を解雇する際の注意点

ここからは、休職期間が満了した従業員を解雇する際の注意点について解説します。

雇用保険の手続きを早めに行う

従業員の退職または解雇が決定したら、雇用保険の手続きを行う必要があります。会社側で必要書類を用意し、退職日の翌日から10日以内にハローワークへ提出しなければなりません。

その後ハローワークから会社に「離職票」が発行されるので、速やかに従業員へ送付してください。

手続きが遅れると、従業員が雇用保険の失業手当を受給できなくなる恐れがあります。場合によっては訴訟に発展することもあるので、余裕を持って手続きを行いましょう。

退職金の支給額・支払日を明確にしておく

退職金制度を設ける際は、退職金の支払時期について定めなければなりません。支払時期を定めなかった場合は、請求された日から7日以内に支給する必要があります。

また、退職金の支給額は勤続年数に応じて変動します。休職期間を勤続年数に含めるか否かを事前に決め、会社の就業規則で定めておきましょう。

休職トラブルを防ぐには?就業規則の例文付きで解説



休職トラブルを防ぐためには、就業規則を適切に作成することが重要です。就業規則に定めたほうがよい項目について、例文付きで解説します。

休職期間を定める

休職制度を設ける場合は、期間を明確に定める必要があります。3カ月から3年としている会社が一般的で、勤続年数に応じて休職期間に差を設けることも可能です。

休職期間については、次のとおりとする。

1.欠勤が1カ月を経過した日の翌日から起算して3カ月間。
2.勤続年数が1年未満の者については、前項に定める期間を上限として個別に定める。

休職を開始した日が明確になるように、休職の要件も記載しておく必要があります。例えば以下のように、休職を認める条件を具体的に記載するとよいでしょう。

労働者が次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。

1.業務外の傷病による欠勤が連続して1カ月を経過しても、なお傷病が治癒しないとき。
2.業務外の傷病による欠勤が継続、断続を問わず1カ月を超え、なお通常の労務提供が困難であると医師もしくは産業医が認めたとき。

治癒の基準を定める

復職できるレベルまで傷病が治癒しているのか、判断が難しいケースもあるでしょう。復職するためには「医師が傷病の治癒を証明し、復職可能と判断すること」を条件とした上で、治癒の基準を明確にしておく必要があります。

「治癒」とは次の条件をすべて満たす状態を指す。

1.常時出勤できること。
2.常時所定労働時間労働ができること。
3.通常の社員と同等程度に業務を行えること。

休職前の職務に完全復帰できるのが望ましいのですが、主治医から「短時間勤務なら復職可能」など、制限付きの診断がなれることもあります。

そのような場合に備えて、時短勤務や配置転換についても明記しておくとよいでしょう。

従業員は原則として休職前の職務に復帰させる。

ただし、医師の診断等により元の職務に復帰させることが困難と判断された場合は、配置転換、労働時間短縮、責任の軽減などの措置を取る。状況に応じて給与の減額を行う場合があり、労働条件について新たに決定することがある。

受診や診断書の提出義務を定める

復職可否の判断には、医師の診断結果が欠かせません。

受診や診断書の提出を拒まれることがないように、あらかじめ義務項目として定めておきましょう。また診断結果を参考に、最終的な判断は会社が行うことも明記します。

休職を認める場合には、従業員は医師による診断書の提出をしなければならない。

会社は従業員に受診を命じ、この診断結果を参考にしながら復帰の可否を判断する。従業員は正当な理由なく受診を拒否することはできない。

休職制度を悪用されないための対策

休職制度を設ける場合は、従業員に制度を悪用されないよう対策を講じる必要があります。

休職と復職の繰り返しを防ぐ


休職期間満了が近くなると復職し、しばらくすると再び休職するといったケースもあります。病気などが再発する場合もありますが、悪用と言わざるを得ない事例があるのも事実です。

他の従業員の負担を考えると、休職を繰り返す状況は放置できません。短期間で何度も休職することのないように、前後の休職期間の通算規定を設けるとよいでしょう。

本人に悪意はなくても、特にうつ病などの精神疾患では休職と復職を繰り返すケースがあります。
具体的には、「復職後6カ月以内に同一または類似の事由により再び欠勤する場合は、復職前の休職期間の残存期間を休職期間とする」などと就業規則に定めます。

休職期間中の過ごし方を定める

休職期間中の過ごし方を決めておかないと、長期旅行などの不適切な行動を制限できません。「休職中は治療に専念し、傷病の回復に努めなければならない」と明記しておきましょう。

休職中の過ごし方について事前に確認する、生活行動記録を提出させるといった対策も有効です。

ただし、傷病の状態によっては適度な外出がリハビリになることがあります。日常的な通院や買い物、帰省などは許容すべきでしょう。

休職期間中に従業員と連絡を取る

休職期間中の従業員とは、こまめに連絡を取ることが大切です。日々の過ごし方や回復状況を把握するために、以下のような項目を確認してください。

  • 治療や通院の状況
  • 日常生活の様子
  • 現状の不安や悩み


休職者のストレスを軽減するためには、連絡窓口を一本化してメールでやり取りすることをおすすめします。直属の上司ではなく、人事労務担当者や産業医から連絡してもよいでしょう。

これは状況確認だけでなく、復職相談の場にもなります。休職者の状態が回復しているのであれば、復帰に向けた話し合いを行ってください。

まとめ

従業員が休職期間満了後に復職できない場合、解雇もしくは退職扱いとなります。これは就業規則の定めに準ずるため、どちらの対応とするか明確に定めておきましょう。

休職期間満了後の対応によっては、不当解雇とみなされる恐れがあるので注意してください。就業規則の内容が曖昧だと、休職制度を悪用される恐れもあります。休職に関するトラブルを防ぐために、あらかじめ対策を考えておきましょう。

復職の可否を判断する際には、医師の診断書だけでなく産業医の意見を取り入れることが重要です。タレントパレットなら、産業医面談の実施や管理がシステム上で完結できます。休職制度の運用でお悩みの方は、ぜひタレントパレットをご活用ください。

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