離職防止に役立つ施策とは?|離職防止の成功事例、離職防止の重要性などについて解説


離職防止に役立つ施策とは?|離職防止の成功事例、離職防止の重要性などについて解説

労働人口の減少に伴い、企業においては、既存社員の定着率を向上し、人材不足に陥らないための取り組みが欠かせません。この記事では、社員が離職する原因や離職する可能性が高い社員の特徴、離職率の増加によるリスクなどについて解説します。離職防止に役立つ具体的な施策や、離職防止の成功事例も、ぜひ参考にしてください。

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HR領域で離職防止の取り組みが重要視される背景

企業は多大な手間とコストをかけて人材を採用し、採用後も人材定着に向けて、さまざまな取り組みを実施しています。ここでは、離職防止の重要性について解説します。
 

人材の確保が難しい

少子高齢化の影響で、日本の労働人口は減少し続けています。労働人口の減少は人材不足に直結するため、多くの企業が、いかに人材を確保し定着させるのかという課題を抱えています。また、有効求人倍率の上昇に伴い、求人数に対して求職者が不足する「売り手市場」が続いていることから、今後さらに状況は厳しくなると予想されています。

※参考:労働力調査(基本集計)2024年(令和6年)平均結果の要約
※参考:職業紹介-都道府県別有効求人倍率:主要労働統計指標|労働政策研究・研修機構(JILPT)
 

採用者の離職率が高い

厚生労働省の調査によると、令和3年3月卒業者における就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者38.4%、新規大卒就職者34.9%でした。これは、高卒・大卒ともに、採用者の3割が3年以内に退職していることを示しています。勤続年数が短い社員が増えると、採用や教育にかけたコストが無駄になり、企業にとっては大きな損失となります。

※参考:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します|厚生労働省

転職が容易になっている

転職する人の割合は年々増加傾向にあり、企業は人材流出への対策も講じなければなりません。離職率が上がって人材が不足することで、組織が正常に機能しなくなるリスクもあります。また、人手不足によって社員のエンゲージメントが低下すると、さらなる離職を招き、深刻な人手不足に陥る可能性も考えられます。

※参考:転職動向調査2023年版(2022年実績) | マイナビキャリアリサーチLab

社員が離職する理由

社員が退職を申し出る大半は、何らかの不満を抱えています。離職の原因はひとつではなく、複数の問題があることも少なくありません。ここでは、社員が離職する理由について解説します。 

待遇に不満がある

労働時間と給与が見合っていなかったり、福利厚生が乏しかったりすると、待遇に対する不満が生じやすくなります。そのような状況がエンゲージメントの低下を招き、待遇のよい他社へ転職する社員を増やしてしまいます。働き方改革やワークライフバランスへの取り組みが不十分な企業は、離職につながる要因を抱えている状態といえるでしょう。 

業務量が多い

業務量の多さも、社員が離職を決意する要因です。社員1人あたりの業務量が多すぎると、定時までに仕事が終わらず、残業をして対応することになります。そのような環境下では、長時間労働が常態化して、心身に不調をきたし、退職する社員が増えるといった悪循環に陥りがちです。
 

人間関係や職場環境にストレスを感じている

上司や同僚、顧客と良好な人間関係を築けていないと、離職したいという気持ちが高まります。職場によっては、モラハラやパワハラなど、ハラスメント行為が横行している可能性もあります。人間関係や職場環境への不満、ハラスメントに対するストレスが退職を招くケースも少なくありません。
 

人事評価に不満がある

人事評価には、客観的かつ公平性を保つ基準が求められます。明確な基準がない状態での評価は、モチベーション低下に直結します。努力をすべき方向性や、企業が求める人物像を把握できないと、将来設計に支障をきたし、離職につながりやすくなります。

教育制度に不満がある

教育制度が整っていないと、社員は「今後の成長をイメージできない」「キャリアを積むことが難しい」と感じやすくなります。スキルアップが望めない状況では前向きに働くことができず、社員の離職率も高くなる傾向にあります。

業務に向いていない

業務への適性も、社員の離職に大きく関係します。スキル不足によりチーム全体に迷惑をかけてしまったり、組織の業務効率を下げてしまったりすると、仕事に対する意欲が低下します。相談しづらい環境や、失敗を責められるような雰囲気の場合、離職を選択する社員が増加するでしょう。

将来に不安がある

会社や自分自身の将来にプラス要因が見い出せないと、社員は離職してしまいます。たとえば、長時間労働やサービス残業が常態化している、有給休暇が取りづらいといった環境は、心身に大きな負担がかかります。

また、スキルアップや成長の機会が乏しいと、やりがいを感じられません。 業績が不安定であったり、事業拡大の見通しが立たなかったりする場合にも、将来性に不安を抱きます。

離職する可能性が高い社員の特徴

離職する可能性が高い社員には、いくつかの特徴があります。離職の前兆を逃さず、適切なフォローをすることが重要です。ここでは、離職を検討している社員の特徴について解説します。

コミュニケーションが希薄になる

職場内におけるコミュニケーションが希薄になった社員は、離職を検討している可能性があります。たとえば「雑談の頻度が少なくなる」「ミーティングで積極的に発言をしなくなる」といった兆候が挙げられます。以前と比べて、挨拶に元気がなかったり、上司や同僚との関わりが減ったりしたら、注意が必要です。

モチベーションが低下する

離職を検討している社員は、仕事に対するモチベーションが低くなる傾向にあります。業務効率が下がったり、ミスが増えたりしている社員は、モチベーションが低下して業務への関心が薄くなっている可能性があります。モチベーションの低さが離職につながるとは限らないものの、状況が悪化する前に、適切なフォローをしなければなりません。

業務に対する積極性が弱まる

離職を視野に入れている社員は、業務に対して積極的に取り組まなくなります。「新しい業務に消極的である」「長期プロジェクトへの参画を避けている」といった行動が目立つ場合には、離職を検討している可能性があります。いつでも辞められるように、責任のある仕事を避けながら調整していると考えられます。

遅刻や早退が増える

遅刻や早退が増えた場合も、社員が離職を考えていることが疑われます。上司や同僚からの評価を気にしなくなると人間関係も悪化しがちで、離職の可能性が高まります。また、転職活動を優先することで、遅刻や早退が増えるケースもあります。

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離職が多い業界とは

厚生労働省が発表した「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」によると、大卒の新規学卒就職者のうち、就職後3年以内の離職者が多い業界の上位5つは、以下のとおりです。

産業

離職率

宿泊業・飲食サービス業

56.6%

生活関連サービス業・娯楽業

53.7%

教育・学習支援業

46.6%

小売業

41.9%

医療・福祉

41.5%

宿泊業・飲食サービス業や生活関連サービス業・娯楽業は、半数以上が3年以内に退職していることから、離職に関する課題を抱えていることがわかります。教育・学習支援業、小売業、医療・福祉も、離職率が40%以上という高さです。

※参考:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します|厚生労働省

離職防止に失敗した場合の影響

離職率が増加すると、企業にどのようなリスクをもたらすのでしょうか。ここでは、離職率の増加によるリスクについて解説します。

人材が流出する

離職率の増加により人材の流出が続くと、企業の成長スピードも鈍化します。人材不足の慢性化が労働環境の悪化を招き、残った社員の負担はさらに大きくなるでしょう。少ない人数で許容量を超えた業務を続けると、ミスが発生しやすくなり、業務効率も低下します。

人材不足が深刻な状況に陥ると、組織が正常に機能しなくなり、企業活動にも悪影響が及ぶ可能性があります。

採用・教育コストが増える

退職する社員が増えると、人材の採用や教育にかかるコストは高くなります。社員1人の採用・教育にかかるコストは、100万円以上とされており、離職率が高くなるほど企業の利益が圧迫されます。

既存社員の負担が重くなる

離職者が担当していた業務は、新しい社員が配属されるまでチーム内で分担して対応します。他の業務を担当しているところに業務が追加されるため、既存社員の負担増加は避けられません。人材の確保が難しいことから、新しい社員の配属に時間がかかるケースも多く、業務量の多さに不満を抱いた既存社員が離職してしまうリスクがあります。

企業イメージが悪化する

離職率が高い企業はイメージが悪くなりがちです。企業イメージの悪化は、採用活動においてもデメリットになります。ハラスメントの横行を疑われたり、「ブラック企業」と判断されたりする可能性があり、優秀な人材が確保しにくくなります。離職率の低さをアピールポイントにできないと、採用活動をしても人が集まらず、人材不足が悪化しかねません。

離職防止に役立つ施策【社内状況の把握】

離職率の改善策として、社内の状況を把握する取り組みからはじめます。社員や退職者へのヒアリングを通して自社の課題を洗い出し、最適なアプローチ方法を検討しましょう。

社員と定期的に面談をする

社員と定期的に面談することで、企業に対する不満や組織が抱えている問題点を把握しやすくなります。広く現場の声を集めたい場合は、1on1ミーティングやチームミーティングなど、小規模の会議を開催しましょう。社員の意見から企業の問題点や改善点を洗い出し、優先順位をつけて対処します。

アンケートを実施する

離職防止には、社員の満足度や不満を把握することが重要です。そのために有効なのが、アンケートや聞き取り調査の実施です。社員に直接意見を聞くと、何に不満を感じ、何を求めているのかを把握できます。得られた結果をもとに課題を分析することで、的確かつ効果的な改善策を講じられます。

実施にあたっては、目的の周知や設問の工夫、繁忙期を避けるなど、社員に負担をかけないための配慮が重要です。

離職防止ツールを導入する

離職防止ツールとは、社員の早期離職の防止や定着率向上を目的としたシステムです。 社員のモチベーションや満足度の可視化、ストレスチェック、コミュニケーションの活性化といった機能により、離職を考えている社員を把握し、対策を講じることができます。また、職場の課題を洗い出すことで、働きやすい環境づくりにも役立ちます。

退職者から退職理由を聞く

退職を希望している社員に対して、具体的な退職理由や不満に感じた点を聞き出すのも、効果的な方法です。離職につながった原因が把握できれば、離職防止の施策を考えやすくなります。ただし、必ずしも本音を伝えてくれるとは限らない点に留意し、参考材料のひとつとして活用しましょう。

離職防止に役立つ施策【社内コミュニケーションの活性化】

良好な人間関係が築けると、職場の雰囲気もよくなり、社員の離職を防げます。ここでは、社内コミュニケーションを活性化するためのツールや仕組みについて解説します。

社内SNSを活用する

社内SNSとは、社内のみで利用できるSNSを指し、円滑なコミュニケーションをサポートするツールです。メールよりも利用しやすく、軽めの雑談にも向いています。相談しやすい環境は、人間関係のストレス減少につながるため、離職防止に有効な施策といえるでしょう。

1on1ミーティングを実施する

1on1ミーティングとは、上司と部下による1対1の面談を指します。上司から一方的に指示や指導をするのではなく、対話型コミュニケーションを重視する手法です。1on1ミーティングにより、部下の不安や悩みを聞き出すことができれば、人間関係を原因とした離職の防止策として機能します。

メンター制度を設ける

メンター制度も離職防止につながる施策のひとつです。メンター制度とは、先輩と後輩のマンツーマンで、目標設定や振り返りをしたり、コミュニケーションを取ったりする仕組みです。
新入社員に対して、入社3~10年の若手社員をサポート役につけることで、精神面のフォローがしやすくなります。

社員同士で不安や悩みについて話せるようになると、モチベーションの向上や定着率アップなどの効果が出てきます。

離職防止に役立つ施策【労働環境の整備】

労働環境に不満があると社員の離職率は高くなるため、時代に合わせた環境づくりが重要です。ここでは、働きやすい環境にするための方法について解説します。

労働時間の管理を徹底する

労働基準法の改正により、時間外労働の上限は原則月45時間、年360時間までとなり、企業には遵守が義務付けられました。社員の労働時間が正確に管理できていない場合は、勤怠管理システムの導入、社員の労働時間を可視化するといった方法が有効です。労働時間の徹底した管理は、特定の社員に対する仕事の偏りを是正する効果もあります。

社員の裁量を拡大する

それぞれの社員に一定の裁量を与えることで、仕事のモチベーションが高まり、組織全体の成長につながる可能性があります。また、会社へのエンゲージメントが育まれることで社員の定着率が向上し、離職率の改善も見込めます。

柔軟な働き方を取り入れる

テレワーク・フレックス・時短勤務といった柔軟な働き方を取り入れると、さまざまな事情を持つ社員の離職を防止できます。なかでも「会社に不満はないが、育児や介護などの事情で離職するしかない」という社員を減らせる点が、大きなメリットです。多様な働き方を選択できることで、社員は安心して働けるようになり、企業のイメージも向上します。

ハラスメント対策を導入する

パワハラやセクハラといったハラスメントの発生は、離職者の増加や職場全体の雰囲気の悪化を引き起こします。その結果、経営や業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。ハラスメントが発覚した場合は、被害者・加害者・第三者へのヒアリングや、加害者への適切な処分、再発防止策の実施が必要です。

また、ハラスメント防止方針の策定や社内周知、相談窓口の設置、社員向けの研修、定期的なアンケート調査など、ハラスメントが起きにくい職場づくりも離職防止につながります。

離職防止に役立つ施策【待遇の改善】

社員は、頑張りや成果が公平かつ正当に評価されることで、仕事へのモチベーションが上がります。また、自分を支えている家族にも配慮があると、会社に対する満足度も高まります。ここでは、離職防止策としての評価や福利厚生の制度について解説します。

人事評価制度を改善する

社員の昇給や昇進は、人事評価に左右されます。人事評価制度が適切に運用されていなかったり、評価される基準が不透明だったりすると「正当に評価されない」といった不満が生じやすくなります。努力や成果が適切に評価される人事評価制度を構築し、評価に応じて処遇を改善するなど、社員が納得できるような運用を目指しましょう。

給与・賞与を見直す

給与や賞与に不満を抱いている社員のなかには、転職で状況を打破しようと考える人もいます。離職防止策としては、納得してもらえる額の給与や賞与を提示するのが望ましいものの、他の社員とのバランスを考えると、容易には変更できません。改善や変更をするなら、法改正や組織の再編といったタイミングで、抜本的な改革をするとよいでしょう。

福利厚生を充実させる

福利厚生とは、社員本人の給与や賞与とは別に、社員やその家族に提供される報酬やサービスです。福利厚生には、法律によって提供が義務づけられている「法定福利厚生」と、企業が自由に設定できる「法定外福利厚生」の2種類があります。社員のニーズや企業の風土に合う福利厚生があると、社員の満足度が向上して離職防止に役立ちます。

離職防止に役立つ施策【スキルアップの支援】

教育制度の見直しも有効な離職防止策です。若手・中堅・ベテランなど、属性に応じた施策を設けることで、長期的な視点でのスキルアップが可能です。ここでは、企業ができるスキルアップの支援について解説します。

研修制度を充実させる

研修制度が整っていないと、スキルアップを実感できず、仕事に対するモチベーションが上がりません。企業が、研修やワークショップの機会を設けたり、資格取得に関する手当を支給したりするなど、社員が着実にスキルアップできる環境を整えましょう。

マネジメントスキルを向上させる

スキルアップを図るには、管理者向けの研修を実施して、マネジメントスキルを向上させることも重要です。上司が適切なマネジメントスキルを持っていれば、チーム内のコミュニケーションが円滑になり、人間関係のストレスも減るでしょう。結果として職場の雰囲気がよくなり、離職防止につながります。

キャリアパスを明示する

キャリアパスを明確にすると、社員は将来のビジョンを描きやすくなり、モチベーションを高く保ちながら業務に取り組めます。職務やレベルごとに必要なスキル、昇進の基準が可視化されることで、現時点での課題、これから求められる行動などが明確になり、自主性や向上心が培われます。

将来像をイメージできる環境は、社員に安心感をもたらし、前向きな姿勢で仕事に取り組む原動力になるでしょう。

離職防止の取り組みの成功事例【株式会社プレナス】

離職防止の成功事例として、株式会社プレナスの事例を紹介します。同社は、ほっともっと・やよい軒・MKレストランの3ブランドを展開している企業です。人材管理や人手不足などの課題を解決するためにタレントパレットを導入し、「採用強化」「エンゲージメント向上」「離職防止」を、ワンストップで運用しています。

具体的な離職防止策として取り組んだのは、アンケート機能を活用した社員のコンディションチェックです。人間関係や健康状態の5段階評価を毎月実施して、コンディションがよくない社員に対して早期フォローをすることで、離職防止に高い成果を上げています。

全国2,500店舗の社員を対象とした採用強化・エンゲージメント向上・離職防止をワンストップで実現

まとめ

企業の存続のためには、優秀な人材の確保と定着が欠かせません。今後も労働人口の減少が予想されるなかで、企業には離職防止への積極的な取り組みが求められています。

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