ピグマリオン効果とは?他の効果との違いや活用法、注意点を解説


ピグマリオン効果とは?他の効果との違いや活用法、注意点を解説

こんにちは。人事・経営に役立つメディア「タレントマネジメントラボ」を運営する「タレントパレット」事業部編集チームです。

人材育成において、部下をより効率的に成長させたいと思うケースはよくあることです。しかし、マネジメント研修などを実施しても、期待した通りの成長をしているかわからないというケースは少なくありません。仮にこれまでの人材育成の方法に限界や課題を感じている場合は、他人の期待によって従業員の能力を引き出すピグマリオン効果を活用する方法も検討できるでしょう。

しかし、ピグマリオン効果がどういったものか概要や効果を把握しきれていないというケースも多いのではないでしょうか。実際、ビジネスでの活用例も多いものの、間違った活用方法では人材育成につながらなくなってしまいます。

本記事では、ピグマリオン効果の概要とその他の効果との違い、活用するメリットや具体的な活用方法についてみていきましょう。

ピグマリオン効果の概要

ピグマリオン効果とは、他者(何かを教える人)の期待によって学習者の学習効果が向上する効果のことです。教育心理学における心理的行動で、教師期待効果やローゼンタール効果とも呼ばれています。

1964年にアメリカの教育心理学者であるロバート・ローゼンタールが提唱したものです。他者からの期待で学習能力の向上が見られたことから、現在は教育現場だけではなくビジネスにおいても部下を教育する際にも採用されています。

実験によって効果が検証された

ピグマリオン効果の実験は、提唱者であるローゼンタールによって実施されています。簡単にいえば、ローゼンタールが「今後成績が伸びる児童がわかる特別なテスト」と称し、期待をかけた状態で普通の知能テストを小学生に対して実施したという実験でした。

結果として、期待をかけた言葉によって児童の成績が伸びたことから、「人は適度な期待によって能力が伸びる」という仕組みを提唱したという流れです。学習結果、心理的効果の面から賛否両論があるのは事実であるものの、コミュニケーションの方法も異なってくることから、期待することで成果を出す仕組みとしては有用だといえるでしょう。

ビジネスで用いられる理由

ピグマリオン効果は提唱者のローゼンタールが教育学者であったことから、教育シーンでよく採用されています。そのうえで、近年のビジネスシーンにおいては、企業の人材教育やマネジメント教育に採用されることが増えてきました。

理由として、ローゼンタールの実験と同じで、上司が部下の成長を期待することでモチベーションが高まり、自然と高い能力を身につけられるようになることが期待されているためです。また、働き方が多様化していることから、働く理由においても他者の期待を前提としたコミュニケーションによって従業員のモチベーションを保つことにも役立っているといえるでしょう。

加えて、仕事においてもいい影響が出る可能性が高く、ビジネスにおいてもピグマリオン効果は注目されている状況です。

ピグマリオン効果の由来

ピグマリオンとはギリシャ神話の登場人物であり、キプロス島の王とされています。ピグマリオン効果は、現実世界の女性に失望したピグマリオンが理想となる女性像を自ら彫刻し、その像に恋をし、女性像が人間になることを願った結果、神によってそれが現実になったという神話に由来しているものです。

ピグマリオン効果は相手に対して期待することで、生産性の向上や学習効果の向上などにつながる現象を示す言葉です。やる気を上げるという点ではモチベーション、企業に対する信頼度の高さを示す従業員エンゲージメントとも似たメリットを発揮するでしょう。

モチベーションとピグマリオン効果の違いをより把握したい方はこちらの記事から。

「モチベーション」については、こちらの記事をご確認ください。

ピグマリオン効果と他の心理的行動の違い



ピグマリオン効果は心理的行動のひとつです。そして、いくつか混同されることもある心理的行動がビジネスシーンではよく出てきます。代表的なものは次の3つです。

  • ゴーレム効果
  • ハロー効果
  • ホーソン効果


ここでは、それぞれの効果の違いをよくみていきましょう。

ゴーレム効果との違い

ゴーレム効果は、ピグマリオン効果と真逆で期待されないことで学習成果が出づらくなることを意味する心効果です。上司が部下の成長を期待しなければ、部下のモチベーションは下がってしまいます。

その結果として、仕事のパフォーマンスの低下や、部下の成長がないという悪循環に陥ることになるでしょう。ピグマリオン効果とは真逆の効果であり、部下の成長を妨げる大きな要因となります。

ピグマリオン効果は、上司や周囲の期待によって心身のパフォーマンスを引き出すものです。対して、ゴーレム効果は周囲から期待や関心をもたれないことによってパフォーマンスが下がっていく効果です。 より、ゴーレム効果について詳しく知りたい方ははこちらの記事から。

「ピグマリオン効果ゴーレム効果」については、こちらの記事をご確認ください。

ハロー効果との違い

ハロー効果とは、教育者(評価者)の捉え方によって良い効果にも悪い効果にもなるとする心理的効果です。アメリカの心理学者であるエドワード・L・ソーンダイクが提唱した理論で、ポジティブ・ハロー効果とネガティブ・ハロー効果の2つに分類されます。

たとえば、ある特定の評価を見た時に、その評価を総合的な評価と錯覚してしまうケースはハロー効果に当てはまるでしょう。さらに具体的にいえば、評価者次第で「一部で効率的に動けているという評価につられて、コミュニケーション力も高い、プライベートも充実している」という歪んだ評価につながってしまうことを意味します。

ピグマリオン効果と大きく異なるのは、影響を受ける人物です。ピグマリオン効果は期待された側が影響を受けるのに対し、ハロー効果は評価する側に影響を与えます。部下を正しく評価する場合、ハロー効果の影響を受けないようにする必要があるでしょう。

ホーソン効果との違い

ホーソン効果とは、「注目や関心によって期待に応えようとする想いが強くなることで、結果的にいい方向に進む」という心理的行動です。ウエスタン・エレクトリック社の放送工場で行われた実証実験からこの名が付けられました。

一見すると、ピグマリオン効果とよく似ていますが、ホーソン効果においては他者からの期待は関係ありません。注目や関心を感じる環境や仕組み作りがホーソン効果では重要であるため、この点において両者が異なることを覚えておきましょう。

ピグマリオン効果は期待によってパフォーマンス向上が図れる心理的行動です。対して、ホーソン効果は注目によってパフォーマンス向上を図る心理的行動であるため、両者には明確な違いがあるといえるでしょう。ホーソン効果についてより詳しく知りたい方はこちらの記事から。

「ピグマリオン効果ホーソン効果」については、こちらの記事をご確認ください。

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ビジネス上でピグマリオン効果を活用するメリット

ピグマリオン効果を社内人材の育成に活用すると、次のようなメリットを享受できます。

  • 職場の環境が改善する
  • モチベーションや生産性向上につながる
  • 自己効力が向上する


とくに職場の環境改善や従業員に対して心理的にプラスの効果を与えたい場合には役立つといえるでしょう。ここでは、それぞれのメリットがどのようにピグマリオン効果と結びついているのかを解説します。

職場の環境が改善する

ピグマリオン効果は上司が部下に期待することでパフォーマンスが向上する心理的行動です。つまり、部下は上司に期待されているという心理が働くことで、職場の環境が良いと判断してくれる可能性が高まります。

また、部下は上司に期待されていると感じて、積極的に上司とコミュニケーションを取ろうとするでしょう。その結果周囲との信頼関係も育まれるようになり、職場の環境が総合的に改善する可能性があります。

モチベーションアップや生産性向上につながる

部下が上司に期待されているという安心感から、部下のモチベーションアップや生産性向上が期待できるでしょう。自律的に業務に取り組みやすくなるため、成長を通じて仕事で貢献しようという気持ちになっていくことにも期待できます。

その結果、上手く仕組みが作れれば、会社全体の生産性が高まっていく可能性もあるといえるでしょう。自律的な動きが評価されていると感じられる場合、会社への定着率も高まるため、エンゲージメントの向上も期待可能です。

自己効力が向上する

自己効力とは、「目標に対して結果を出すために、適切な行動を選択したうえで上手くできると認識する力」(できると信じる力)です。ピグマリオン効果を活用することで、自己効力感が向上させられるため、、成果に結びつけばより大きな効果を発揮するでしょう。

ただし、コミュニケーションによって、期待をかける際には部下の個性に合わせる必要があります。人によっては期待をプレッシャーと受け取ってしまう可能性があるため、マネジメントによってコントロールしなければなりません。

ピグマリオン効果のビジネスでの活用法



ピグマリオン効果をビジネスシーンで活用する場合、代表的な手法として以下の3つがあります。

  • 定期的な個人面談を行う
  • 言葉によって具体的に期待を示す
  • 適切な課題や裁量、評価を示す


業務のスタンスとして、「部下に対して期待をしている」と心の内で思っておくことで効果を発揮するケースも想定されるでしょう。しかし、期待していることを部下に直接伝える、あるいは間接的にでも伝えることでより高い効果を享受できる可能性もあります。ここでは、それぞれの詳細を見ていきましょう。

定期的な個人面談を行う

部下に対して期待をかける前に、部下の個性を上司が把握しておかなければなりません。そのため、定期的な個人面談を行い、適切な関わり方や部下の特性を見抜き、ピグマリオン効果が活用できるか見極めましょう。

たとえば、部下全てに同じように期待をかけていたとしても、人によってはプレッシャーと感じてしまい、行動に移しづらくなってしまう可能性もあるためです。ピグマリオン効果の効果を高めるためには、個人面談を行い特性を見抜いた上で、それぞれにあった期待のかけ方が大切だといえます。

言葉によって具体的に期待を示す

部下の人柄や個性を把握していれば、言葉で期待していることを伝える方法も効果的です。対象者に対して期待している事実を直接伝えることで、より高い効果を発揮する場合があります。

ただし、どのタイミングで言葉で期待を示すかは部下の特性によって異なります。個人面談の際に声をかけるのがベストな場合もあれば、アクションを起こすたびに期待を伝えるケースがベストという場合もあるでしょう。中には、あえて声をかけずに見守ることで期待を感じるケースもあるため、見極めが大切です。

上司からの期待の示し方は、個別面談によって得られた個人の特性をもとに検討しましょう。適切なタイミングで期待を伝えることができれば、より深い信頼関係の構築が期待できます。

適切な課題や裁量、評価を示す

上司は部下に対して適切な課題や仕事の裁量権を与えるようにすると良いでしょう。適切な課題設定や業務量などは、本人の意見もヒアリングした上で設定するのが理想的です。

評価に関しても、部下にヒアリングした内容を元に行うことがベストです。たとえば、部下に過剰な業務量や課題を与えたにもかかわらず「こちらの期待に応えられなかった」と評価する場合、著しく信頼関係を損ねることになります。そのため、上司は、部下と個別に設定した課題や裁量権に対して正しく評価を下す必要があるといえるでしょう。

ピグマリオン効果はビジネスでも活用することができます。うまく活用できるかどうかは上司のマネジメント力に左右されるものの、従業員のパフォーマンスを引き上げることが可能です。ピグマリオン効果の事例について詳しく知りたい方はこちらの記事から。

「ピグマリオン効果例」については、こちらの記事をご確認ください。

ピグマリオン効果の活用時の注意点

ここからは、ピグマリオン効果を社内人材の育成に活用する際のポイントについてみていきましょう。とくに、成長を促す場合はコミュニケーションの方法に注意が必要であり、現状維持では成長はありません。

そのため、ピグマリオン効果を期待する場合は、「様々なコミュニケーション方法の1つとして複数の方法と組み合わせる」といった工夫が必要だといえます。

期待や評価は大事だが現状維持に留めない

ピグマリオン効果において、部下に対する期待や評価は重要です。しかし、評価や結果に部下が満足してしまい、現状維持に留まろうとしてしまう場合は評価方法やコミュニケーションに問題があるといえます。

ピグマリオン効果によって部下が成長し、より向上心を持って業務に励んでもらうことが目的です。そのため、現状維持にとどまらないような仕組みづくりや声のかけ方が重要となります。

上司は、話し方やコミュニケーションによって期待や評価を伝えることが多いと想定されることから、新たな課題を与えるなどして、より向上心を持てるような工夫が必要です。

他の方法と組み合わせる

ピグマリオン効果はあくまでも心理行動のひとつです。そのため、ピグマリオン効果だけでは、基本的に社内人材の教育が完結しないといえるでしょう。また、他の方法と組み合わせることでより高い効果が期待できるようになります。

人によってはピグマリオン効果よりも別の方法やコミュニケーションの方が効果的である可能性も否定できません。人材に対して、適材適所という言葉があるように、教育方法もその人に適したものを採用する必要があります。

ワンパターンはNG

言葉やコミュニケーションによる期待のかけ方がワンパターンになってしまうと、効果が薄くなってしまいます。また、いつも同じような期待しかかけられていないと部下が気づくと、結果的に不信感を持たれてしまう可能性もあるでしょう。

そのため、期待をかけるとしてワンパターンにならない工夫が必要です。部下の成長を通して、企業全体の生産性向上やモチベーションアップを狙うのであれば、ワンパターンな期待のかけ方はNGである点を知っておきましょう。

ピグマリオン効果をうまく活用すれば企業全体の生産性向上やモチベーションアップにつながることから業績の改善も可能だといえるでしょう。しかし、ピグマリオン効果には欠点もあります。 ピグマリオン効果の欠点について詳しく知りたい方はこちらの記事から。

「ピグマリオン効果欠点」については、こちらの記事をご確認ください。

まとめ

ピグマリオン効果は、上司が部下の成長を期待することで部下が自律的に動くようになる心理行動のひとつです。職場環境の改善や生産性の向上につながるなどメリットが多い反面、声のかけ方によっては現状維持にとどまってしまったり、状況が悪化してしまったりする可能性もあります。

そのため、ピグマリオン効果による人材教育が効果的かどうか、個人面談を通して見抜く必要があるでしょう。部下の人数が多い場合、時間と労力がかかるものの、成長を心から期待するのであれば、個別面談を欠かすことはできません。

タレントマネジメントシステムのタレントパレットを活用すれば、従業員の特性や課題を明確化したうえで記録しておけるため、個別面談にかける時間を大幅に削減できる可能性があります。最終的には面談は必要ですが、タレントパレットに情報を保存しておくことで、全社で従業員に対してどのように期待をかければいいかわかるようになるでしょう。

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